醍醐寺に伝わる古文書・聖教類は、桃山時代義演座主が、平安期より伝承されている文書一紙一紙を箱に入れ保存したことに始まります。明治35年(1902)東大史料編纂所員黒板勝美先生が、その数658箱と確認され、内容的にも仏教史料に留まらず、政治、経済、芸能の分野に至るまで、日本史に関わる貴重な史料であることを明らかにされ、調査の方針を決定。大正3年(1914)より本格的調査に着手されました。以来百年間調査は継続され、『醍醐寺文書記録聖教目録』として作成されつつあります。昭和60年(1985)よりこの目録をデジタル化し、史料データベースの構築に入り、科学的に目録作成ができました。その結果、函を中心として文化財の指定がなされ、今回、第1函より558函まで69,378点が「醍醐寺文書聖教」として「国宝」に指定されました。
何より、明治35年以来、黒板勝美先生をはじめ、調査に携わった諸先生の「学徳」に応えることができたことに無上の喜びを思い、この調査を独力で支えてきた歴代座主、亡き多くの山内僧侶に深く感謝いたします。
あわせて、今後、この史料を孤立的なものにすることなく、一紙一紙の修理と、デジタル画像化によって、より豊かな目録・索引作成に努力します。これにより文化財が科学的に文化財学として世界の学会の仲間入りができることを確信しております。その根本的、基礎的準備は充実しつつあります。この実現には、図書館形式の「古文書館」の設立が必要であることを思いながら、今回の指定と同価値を有する残り270函の史料調査を続け、「紙の文化」の伝承の責務を果たして参ります。
平成25年6月19日
醍醐寺百三世 仲田順和